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ご無沙汰しています、まとめサイト人です。すでに転生発売から10ヶ月近く経つ今日このごろ、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。傷は癒えましたでしょうか。 さて小説第二弾の発売です。もうずいぶんと転生の記憶も薄れたので(小説のために少しプレイし直すかとも思ったのですが、そんな一人SMみたいな真似もなんなので)、ちょっとじっくり読むのに時間がかかりました。すいません。 今回は短編集で、計5本が二人の作家さんによって執筆されています。 一人は天羽沙夜さんで、これはみなさまご存じ第一弾の神、いわゆるゴッド小説をお書きになった方です。もう一人は安曽了さん。こちらはどういう人か知らないので少しググってみました。 http://www.amgakuin.co.jp/a-street/2003/030902_01.html アミューズメントメディア総合学院ノベル科卒。まぁ別にどこの学校(正確には学校ではないそうですが)を経由していてもいいんですが、 http://www.amgakuin.co.jp/info/2001/011205_01.html http://www.amgakuin.co.jp/a-street/2004/040616_01.html 学院はいるまで小説書いたことがなかったって事は、書き始めて5年未満ですか。 …まぁ、『たとえ呑んだくれて鼻歌まじりに描いた絵でも傑作は傑作』という古い名言もありますから、とにかく作品が良ければそれでいいのですけれど。 小説の内容は天羽さんが『聖痕(スティグマータ)』と『残夜』の二本。安曽さんが『九条、十四歳』と『呼び声』、『熱恋狂人甘菓子聖宴の儀』の三本。 イラストは岩崎美奈子さんの描き下ろしが9点。カラーがカバーに「ナギ、ラギ、コウ」の月詠男子、扉に「那須乃、凛」のツンデレズ、さらにピンナップ風の「閣下、ヒメ、凛」のバレンタイン女子、「ラギー、飛鳥、若林」のホワイトデー男子。あとは中にモノクロが各話一枚ずつです。 ■聖痕(スティグマータ) 交換留学の少し前、まだ天照勢と関わる前の月詠話。ラギーをメインにハードボイルドな月詠の日常と、彼らの背負うものが語られます。 個人的にこの本で一押しの作品です。この小説だけでも570円の価値はあったと思います。ゲームでは語られなかった(恐らくは薄っぺらな後付くらいしかなかった)月詠の事情、彼らのアイデンティティを、天羽さんらしくエレガントに立て直し、描いています。 それでいて萌えエッセンスの散りばめられ方がまた絶妙。男女問わず、細かな描写で読者の琴線をチリンと弾く手法は、ただ素晴らしいとしか表現の仕様がありません。 表題の聖痕(stigmata)は、キリスト教徒の体(手や足、脇腹や頭など)にある日突然現れる「キリストが負った傷」のことで、多くは「自己暗示」や「ヒステリー」が原因ではないかといわれています。 この話ではラギーの傷、そしてペンタファングの負った犠牲の暗喩でしょう。聖痕を負った者は信仰上の苦難に見舞われるともいいますが… ちなみにstigmataは複数形。単数形のstigma自体には聖痕以外に罪人の焼き印や烙印の意味もあります。深いですね。単なる小紅斑とかの意味もありますが(笑) 冒頭のマルコによるレギオン(legion)の一節は大変有名です。聖書研究でも一章を割いて語られるほどですが、伝奇の世界でも悪霊だったり、ガメラと戦ったり人気者です。レギオンの非常にそそられる点は、一個にして「大勢である」というところで、単なる悪霊とは違う、人の心に潜む一千の貌の狂気や、霊魂というシステム自体への妄想をかき立ててくれるところだと思います。この話での意味合いは…天魔を表しているのが表面的な意味と思いますが、もう少し奥があるかもしれません。別にヒメがカーリンのレギオン頭のごとく多重人格になるという意味ではないと思います((C)ピルグリム) 萌えどころ:「一緒に聞く?」、「ヅカ系でっか?」、「怪訝顔の凛の耳朶を噛む」ナギ、背中合わせの凛とナギ、顔容(かんばせ)、ヒメの髪の埃を払う凛、ほか沢山。飛河ちょっと目立たず あと意図的かもしれませんが「ガンマナイフ」はただの放射線照射装置なので刻んだり出来ません。 ■九条、十四歳 14歳時の九条綾人の話。験力の発露と魂神の目覚め。そして彼自身の目覚め。 あの悟りきった総代の若かりし(?)時の葛藤とか、話自体はジュブナイル的で悪くないんですが、変な意味での転生ゲームっぽさ、いわば「がしゃぐわら」をまんま持ってこられても困ります。いやたぶんゲームっぽさを出すのは正しいと言えば正しいのかもしれませんが、なんというかゲームを斟酌しきれてない感じがします。あと冗長で説明が多いです。人物の解説とか長すぎ。 それと…なんなんでしょう。致命的だと思うんですが…面白くない。萌えどころもあんまりないです。別に14歳の総代が主人公だからってボーイズ的な見せ方をしてるわけでもないです。 あと己魔。猫の嗅覚は犬(人の数百万倍)には及ばないものの、人の数万倍はあるらしいので間違ってはいないんですが。人の言うことなど、たとえ魂神の主であっても無視してこそ猫だと思うのですよ。 犬:この家の人は住む場所もくれたし、食べ物もくれた。なにもしていないのにすごく良くしてくれる。 きっとこの家の人は神様に違いない! 猫:この家の人は住む場所もくれたし、食べ物もくれた。なにもしていないのにすごく良くしてくれる。 きっと私は神様に違いない! ■呼び声 ばらっちが如何にしてフォースの暗黒面に目覚めたのか。ゲームでは「話の都合で」敵役に回ったとしか思えなかった彼に、本当は何が起きていたのか、話。 少し気持ち悪い。(悪い意味で) みなさん同人誌買ったこと有りますか。あるものとして話を進めます(笑)。女性のやってる個人誌とかに多いんですが、よくヤマもなくオチもなく意味もあまりないような、その女性の好きなキャラのモノローグ漫画っぽいものが、巻末とかに数ページのってたりするのがあるんですが、そういうのに似てます。わかりにくいですか(笑) アンソロジーとかにも多いけど、転生ので具体的にどれとかいうのは危険かもしれない まぁ、まとめサイト人が私小説をあまり好きじゃないのもあるんだと思いますが、なんでしょう…なりきりチャット? うーん、いまいちうまくいえませんが… 明かされる内容も、すごく浅いです。アルカディアが考えていた適当な設定をそのまんま流した感じがします。 ■熱恋狂人甘菓子聖宴の儀 那須乃の使用人、若林におとずれたバレンタインの奇跡。そしてホワイトデーの喜劇。 「う、う、うわぁぁぁっっっ!?」 ビュン!! バリンッッ!! ぶすりっ!(p175より抜粋) 弓長リスペクト!?(笑) 三本とも面白くないのはもうしょうがないとして、総括しちゃいますが、この小説の作者は書くときにアンソロジー的な「漫画」が頭にあるのではないでしょうか。どれもその脳内に浮かべた漫画を「描写」しているような気がします。アミューズメントメディア総合学院がライトノベルをどういう風に考えているか知りませんが、これは少なくとも小説にはなっていないんじゃないかと思うのです。 ただそれでも弓長御大のテキストと比べると遙かに読める、というのが何とも(笑) 少しフォローするとすれば、アルカディアの考えた転生学園というゲーム自体が面白くないため、そのフォロー的な小説を書けば、それは面白くなくて当然ではあります。それを斟酌して、面白くするのが小説屋だろうとは思いますが。 ■残夜 九条の墜ちた日、そして飛鳥の決意。結奈の決意。 好きですが、ゲームのフォロー的な側面を持ってしまっているので、どこかゲームに縛られているような印象を受けます。でも、己魔!彩女さん!あの幼なじみにまでも(笑)、少し萌えてしまう、ハードボイルドでいて、萌えを忘れない、その手腕はここでも遺憾なく発揮されています。 ところで天羽さんはプロット段階では「ニーベルンゲンの歌」の一節を引用していたとのこと。ニーベルンゲンといえば、夫を殺されたクリエムヒルトがあらゆる手段を使って仇を討つ話(少し曲解あり)ですが…もしやプロット段階では夫=九条を殺された結奈閣下が、あらゆる手段を使って伊波に復讐するという話だったのでしょうか! ちなみにタイトルの残夜とは夜明け前のこと。 制作サイドのスタンスは「適当にやって下さい」だったんじゃないですか。主人公の一人称とか、以前から指摘し続けているあのこだわりのなさは時としていい方向にいくこともないとはいいませんが、クリエイターとしては見下げ果てた姿勢で、改めて怒りがわいてきます。苦難は常に報われるものではありませんが、いい意味でも悪い意味でも、2ちゃんねらーは見ていますよ。>アルカディア、アスミック 天羽さん、安曽さん、お二方とも大変ご苦労さまでした。 天羽さん、本当に、本当にありがとうございました。 次は…転生2? 本気なんでしょうか。 |