関連商品感想


■『転生學園幻蒼録』電撃ゲーム文庫
 
   ゲームの値段 \7,140  
   キャラガイドの値段 \1,680  
   CDドラ(以下略)
   
   天羽先生の小説
            プライスレス。

 小説の方が本当の『転生學園幻蒼録』で、ゲーム化して失敗したのがアレです。
 まさに『見事』の一言。正直あの設定、イベント、なによりあの電波文章を、ここまでしっかりとした一本の小説にすることが出来るとは信じられませんでした。論理的矛盾をやんわりと正し、キャラの動機を描くことでキャラを引き立て、ゲームがおざなりにした『物語の謎』を(恐らくは小説家の先生が自ら導き出したであろう)エレガントな回答によって盛り上げ、『ジュブナイル(苦悩と成長)』、『燃えと萌え』を加味してまでの力作には、本当に涙が止まりません。
 クリアランスがどうとか書いてた人は、この小説を10回くらい書き取りしたほうがいいです。
 
 以下、ネタバレになる部分は文字を白にしてますので、見たい人はCTRL+Aしてください。

 まずゲームと小説の違う部分。
榊原が存在しない。出演しないのではなく、いないことになっています。小説の世界では伊波が転校生です(ただし、天照郷出身で伽月とは幼なじみ。しかも郷を出ていったことにも伏線がある)。
■風間師範はイズナに取り憑かれている。ちなみにイズナはシズナ(八鬼王そのものではなく、それを鎮めた巫女の名称)の暗黒面
■鎮守人がいる。

 エレガントに解釈している部分。
■天照郷の守りはきちんと四方に置かれました。
■執行部謹慎の本当の意味は「玉依の掛で『出雲に向かうと九条が死ぬ』と読まれていたから」。
■「転生」は過去の能力者の力を「受け継いだもの」。多くは血縁や家柄によると信じられている。しかし実際はそれとは関係なく「目覚める者」もいる。過去の記憶が残っていることは滅多にない。

 そのほか細かい点も、矛盾ないように「やんわりと」変えられていて、世界に違和感を感じず、きちんと彼らの「リアリティ」を感じられます。

 個人的に好きだったトコロ。
■宝蔵院と己魔。九十九乱蔵とシャモンのようなイイ関係です。己魔も悪霊食べるし。一家に一匹。
■九条の死で、ちゃんと泣けたところ。
■山吹センセ、カーチェイス。
■あやかし。ゲームであのちっちゃいヘビがアヤカシって知ったときは愕然としたヨ…。ちゃんとドデカイあやかしLOVE。
■ラストシーン。

 少し残念だったのは、全体に話が忙しい点でしょうか。きちんと書かれているのですが、ダイジェストを見ているようなカンジがしました。九条が死ぬまでを上巻、そこからラストまでを下巻の二冊構成だと、もっとエピソードも絡めて、アクションも長く、ラブもはいって、良かったかも。なにより短すぎる!というのが読後第一の感想だったのもありますが、この見事さでもっと長く読みたかったです。あとラストのアクションが少し寂しかった。
 それと萌え中心でこのゲームを買った人にはちょっと物足りないかも知れません。ちなみに出番の印象は

 伊波≧御神>九条>己魔>宝蔵院>伽月≧那須乃>紫上>京羅樹≧若林>真田>飛河=鳳翔=姫宮

 こんなかんじ。
 ちなみにジャケは岩崎先生書き下ろし。中身の挿絵はカラー2(一つはヒロインピンナップ)、モノクロ7枚。


「こんなんじゃない、期待していた學園伝奇ジュブナイルはこんなんじゃない!」と、ゲームをしながら流した無念の涙が、小説でようやく報われた思いです。本当に天羽先生には心からありがとうといいたいです。救われた思いです。